増えているCOPD(慢性閉塞性肺疾患)


1.こんな症状にご注意!

a. 息切れがする
以前と比べ、階段の上り下りや坂道がつらくなっていませんか?



b. 咳や痰が続く
かぜが治っても、咳や痰が長く続いていませんか?



c. 動くとどきどきする時がある
運動の後になかなか動悸が治まらない、ちょっと動いただけでもドキドキする。



d. かぜをひきやすい
最近、どうもかぜをひきやすくなったようだ。




2.COPDを知っていますか?

 COPD(シーオーピーディー)は、慢性閉塞性肺疾患と呼ばれ、ここ10年ほどの間に患者数や死亡率が増加の傾向にあります。
 COPDは息切れ、咳や痰などの症状がゆっくりと進行します。しかし、症状が進むと日常生活に支障をきたすほどの呼吸困難や、肺がんにもかかりやすくなります。

COPDについての新しい考え方や治療法を世界的に統一した「GOLDガイドライン」が2001年に発表になりました。このガイドラインの中で、COPDは細い気管支に始まる炎症が原因と言われています。


これまで肺気腫や慢性気管支炎とされてきた疾患はCOPDの中に含まれます。


3.中高年層に多いCOPD!

 COPDにかかる患者さんの数は、1996年では、男性13万人、女性9万人で、そのうち男性78%、女性70%が65歳以上の患者さんです。
 厚生省の人口動態統計(1996年)によると、COPDによる死亡者は約1万2千人です。また、65歳以上の慢性気管支炎および肺気腫による死亡数は約1万人、調整死亡率は人口10万対8.0となっています。


 最近の調査では、COPDの患者数は潜在患者を含めると約530万人と言われています。わが国の急速な人口の高齢化と、先進国としては高い男性の喫煙率から、COPDの患者数と高齢者を主体とした死亡率はますます増加していくものと考えられています。

4.COPDの危険因子

a. 喫煙
 COPDの発祥に深くかかわり、そのリスクを増大させている最大の要因は喫煙です。喫煙は肺気腫の原因にもなっており、COPDの危険因子の80%から90%を占めています。これまで喫煙者の多くは男性だったこともあり、肺気腫は男性に多くみられる病気でしたが、発祥の要因が同じ条件であれば、女性の方が発症しやすいといわれています。現在、女性の喫煙率が高くなっているので、十分に注意を払う必要があります。

b. 受動喫煙
 たばこの副流煙は喫煙しない人にとっては大きな危険因子となります。

c. その他
 ぜんそく症状、乳幼児の肺炎、成長期の低栄養状態、大気汚染などもCOPDのリスクが高くなります。



5.COPDの検査・診断

 COPDは主にスパイロ検査と画像検査によって診断が行われます。

【COPDを診断するための検査】

スパイロ検査

 スパイロメーターという肺活量計の筒を口にくわえ、思い切り息を吸いこんだあとにできるだけ速く息を吐き出し、吐き切るまでを測定します。
 吐き出した息の最大量を努力性肺活量(FVC)と呼び、最初の一秒間に吐き出せる息の量を一秒量(FEV1)と呼びます。
 そして一秒量(FEV1)が努力性肺活量(FVC)の何%にあたるかという数値を一秒率(FEV1%)と呼び、この一秒率(FEV1%)が70%未満の場合、呼吸機能が低下しているとみなされ、COPDの可能性が疑われます。

画像検査

 X線検査・CT検査で肺の様子や横隔膜の状態、肺胞の様子などを調べます。COPDにかかっていると、X線検査では正常な人に比べて肺が大きくなっていたり横隔膜が平らになっているのがわかります。CT検査では正常な人に比べて血管の陰が現象しているのがわかります。

6.COPDの治療とリハビリ

 COPDは発症すると、元の状態に戻ることがほとんどない病気です。ですから、治療は病気の進行をできる限り防ぐこと、症状をやわらげること、そして生活の質を向上させることが基本になります。
 喫煙者は、最大のリスクである喫煙をやめることが重要です。禁煙が治療の大前提です。当院では、禁煙外来にて禁煙治療を行っております。そして治療や包括的な呼吸リハビリテーション(呼吸法、ストレッチング)を覚えておくことも大切です。

a. 治療に使う薬
@気管支を拡げるために(気管支拡張薬)
β2刺激薬(貼付、吸入) 抗コリン薬 テオフィリン剤

A炎症を抑えるために(抗炎症薬)
吸入ステロイド薬

B感染による悪化をくいとめるために
抗生物質

C痰を出す、あるいは溶かすために
(去痰薬、喀痰溶解薬)

b. 酸素療法
 COPDが進行し、血中の酸素が著しく不足すると、呼吸不全になります。高度の呼吸不全には、長期的酸素吸入を行います。現在は酸素濃縮器の普及によって家庭での酸素吸入が容易になりました(在宅酸素療法)。軽量のボンベを使えば外出も可能です。

c. 腹式呼吸は肺の負担を軽くしてくれます。
 鼻から息を吸いお腹をふくらませ、吐くときは口をすぼめてゆっくりと。きちんとできているかどうか、胸とお腹に手をあてて動きを確認しながら呼吸します。
 階段を上がるときも、ゆっくりと「2回息を吸って、3回吐く」腹式呼吸でリズムをもって上がります。



d. ストレッチングで運動不足や無理な呼吸でこり固まった筋肉を伸ばす。
*伸ばすときは息を吐きながら行いましょう。



e. 筋力トレーニングで歩行や呼吸の際に必要な筋肉を鍛える。



7.COPDの栄養管理

適切な栄養管理は適正体重を維持し治療によい効果を与えます



 呼吸を楽にするためには、吸ったり吐いたりするときに使う筋肉がきちんと維持されていなければなりません。
 そこで、薬物療法や呼吸リハビリテーションとともに栄養管理を行います。適切な栄養管理があってこそ、薬物療法や呼吸リハビリテーションの充分な効果が期待できるといえます。

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