聞こえにくいと思ったら使い始めましょう(Q&A)


 難聴になると、さまざまな障害が生じてきます。人間関係の障害、社会適合の障害、健康の障害などです。それらは互いに影響し合っています。


Q:

難聴ですが、周りの人が大声で話してくれるので問題ありません。


A:

「テレビは自分の部屋で観ているし、必要なことは家族が大きな声で伝えてくれるので、補聴器は要らない」という話を、よく聞きます。たしかに、どうしても必要なことについては相手も声を張り上げてくれると思います。

 私たちの日常の会話は、大きく2つに分けることができます。1つは、どうしても必要な会話。もう1つは、どうでもよい会話です。

 例えば仕事の打ち合わせや、「ご飯はまだ?」「もうすぐ!」などは必要な会話です。相手も大きな声で伝えてくれますし、聞こえないようだと、何度でも言い直してくれます。

 一方、世間話や冗談などは、どうでもよい会話です。聞き逃してもさほど問題はありません。しかし、このどうでもよいと思われる会話こそが、人間関係をスムーズにするために、とても大切なのです。

 普通、世間話を大声ですることはありません。まして周りの人がいれば、大きな声は出しにくいものです。冗談を聞き逃しても、もう一度言い直してはくれません。ですから聞こえるということは人間関係を保つうえでも大切なことです。

 難聴が進むと、極端な場合は「ご飯!」「お風呂!」などといった最低限の、しかも一方通行の会話しかなくなってしまいます。これでは、どうかと思います。相手任せの大声を期待するのではなく、自分から聞こえるように、努力をしてみてはどうでしょう。





Q:

補聴器をつけると、難聴であることがバレてしまうのがいやです。


A:

会社や学校で、難聴であることを隠したいと思うことがあるかもしれません。しかし、一般的には、メリットよりもデメリットの方が多いと思います。

 例えば挨拶などの声をかけられたとき、返事をしなければ相手はどう思うでしょうか?会議や打ち合わせで、聞き取れていないのに何回も聞きなおすことができず、いい加減にうなずいて想像で補って仕事をしていれば、いずれ適当に取り組んでいる、信頼できない人間を思われてしまうでしょう。

 周りの人たちにしても、大きな声を出したり言い直したりするのは、結構大変なことなのです。度重なると、次第にイライラしてきます。

 聞こえが悪いことに対して、社会にまったく偏見がないわけではないかもしれません。しかし、難聴であることを周りの人にわかってもらったほうが、よりよい結果を生むのではないでしょうか。本人が補聴器をつけて努力をしているとわかれば、周りの人も納得して、それなりの話し方をしてくれると思います。

 難聴であることは隠さないほうがよいと思いますよ。


Q:

「聞こえないとボケる」と聞きましたが、ほんとうですか?


A:

難聴とボケの実際の関係はわからないにしても、難聴があるとボケてしまったように見られることは、よくあります。会話に対して適切な受け答えができなかったり、会話に積極的に加わろうとしなくなるからです。

 いろいろな人と会って社会的あるいは知的な刺激があると、ボケ(認知症)になりにくいことが知られています。その意味からは、聞こえないからといってテレビも観ず、人とも会わずでは、それこそボケてしまっても不思議ではありません。

 補聴器をつけていろいろな人と会って話をし、常に刺激を受けるように心がけてください。





Q:

難聴で性格が変わると聞いたのですが、そんなことがあるのですか?


A:

加齢による難聴の場合、一般に聞こえは少しずつ悪くなり、変化も徐々に起きるので気づきにくいのですが、じつは多くの問題が発生してきます。

 難聴になってきますと、聞こえないことによるトラブルを避けるため、あるいはいろいろなことに自信が持てなくなるために、何かと引っ込み思案、消極的になってきます。外に出るのがおっくうだ、人と会いたくない、一人で家の中で好きなことをしていたほうがよいといった理由で、社会から離れ、引きこもりがちになるのです。

 また、話がよく聞こえないことによって疎外感や孤独感、劣等感、怒り、いらだち、自己嫌悪が嵩じ、周りの人たちのちょっとした言葉や動作に神経質になってしまいます。

 性格の強い人の場合は逆に攻撃的になり、相手の言うことを聞かず、一方的な自己主張をするようになってしまうこともあります。この場合も、結局、社会的に孤立してしまいます。

 これらの状態がさらに進むと、病的な精神状態になってきます。落ち込んで「うつ病」になったり、さまざまな形の心身症、神経症になることがあります。ある調査では、難聴の人の半分に抑うつ傾向が見られたと報告されています。こうなると、ますます社会適合がうまくいかず、悪循環になってしまいます。

 難聴を軽視したり、放置したりしないことが大事だと思います。





Q:

母は聞こえがよくないようです。でも、補聴器を使うように勧めると傷ついてしまうのではないかと心配です。


A:

補聴器を使うか使わないか、そして使いこなすことができるかは本人の意欲にかかっています。家族が困っているぐらいの状態ですと、おそらく本人も難聴があることには気づいていることと思います。しかし、補聴器に対して何か否定的な印象を持っているのかもしれません。年寄りくさい、みっともない、役に立たないなどといったことです。

 無理やり補聴器店に連れて行って補聴器をつけさせても、拒否感が強ければ最終的にはつけてくれません。

 本人がその気になるように、周りの人が困っていること、そして最近の補聴器は性能もよく見た目もおしゃれなものが出てきたことなどを、押し付けがましくなく時間をかけて説明したらよいと思います。また、家族からではなく医師から、客観的な検査のデータに基づいて補聴器が必要であることを説明してもらうと、納得してもらえる場合も多いのではないかと思います。


Q:

せっかく補聴器を買ってあげたのになかなか使ってくれません。


A:

せっかく買ってあげた補聴器も使ってくれないではもったいないですね。

 現在は核家族化が進み、高齢でも一人暮らしであったり、同居していても普段は個室にいるという状況が増えてきました。

 ほとんど一日中一人でテレビを見ている場合、補聴器をつけるよりテレビの音量を上げたほうが早いということになります。せいぜい買い物に出ても、スーパーでは何も言わないで買い物ができてしまう。そうすると、話をしないでも一日が過ぎてしまいます。また、たまに家族などと話す機会ができても、普段つけていないので面倒くさくてつける気になりません。

 補聴器を使ってもらうためには、何よりも人と話す機会を多くすることです。部屋に閉じこもっているようでしたら、とにかく人と接する場所に連れ出しましょう。難聴の人はつい家に閉じこもりがちになります。文化教室や趣味などの会、ゲートボールやダンスなどのスポーツに積極的に参加をしてもらうことを勧めたらどうでしょうか。補聴器のためだけでなく、生きがいとボケ防止のためにもよいと思います。





Q:

「都合のいいことだけ聞こえる」というのは本当ですか?


A:

耳の悪い人の近くで、どうせ聞こえないだろうと思って話していると、すべて聞こえていたということがあります。また、同じように話しかけても、よく聞こえるときとあまり聞こえないときがあります。そうなりますと、ついつい「都合のいいことだけ聞こえるんだから」などと考えてしまいますが、感音声難聴ではほんの少しの条件の違い、音のわずかな大きさの違い、周りの雑音、部屋の状況などで聞こえ方がずいぶん違ってきてしまうのです。決して自分勝手に都合のいい音だけを聞いているわけではありません。

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